SHARP PC-1350 の修理

SHARP PC-1350 の修理に関する記事です。




液晶交換

PC-1350 の LCD が黒くなってしまった際の交換用 LCD が頒布されています。

LCD 交換 (+α) の際にあると便利なものは次の通りです。

用途 入手先
精密プラスドライバー #0, #1 分解用 100 円ショップ
精密マイナスドライバー 液晶フレームのツメを起こすのに。可能なら砥石で先端を研いでください。
元々刃物だったものをツメを起こす用途で使うと欠けて危険です。
100 円ショップ
スパッジャー (Amazon) 液晶フレームのツメを起こすのに。樹脂製のものは基板に傷を付けにくい。 通販
ラジオペンチ 液晶フレームのツメを起こすのに 100 円ショップ
歯ブラシ 液晶フレームのツメを折り曲げるのに (お尻で押します)
無水エタノールで清掃する際にも
100 円ショップ、ドラッグストア
アセトン (ネイルリムーバー) 液晶フレームから液晶をはがすのに ホームセンター、100 円ショップ
ジップロック (的な袋) 液晶フレームから液晶をはがす時の漬け込み用 100 円ショップ
イソプロピルアルコール or 無水エタノール 清掃用 ドラッグストア、ホームセンター
綿棒 清掃用 100 円ショップ、ドラッグストア
ポリイミドテープ (Amazon) 液晶フレームのツメを起こす時の基板保護、短絡防止、ホコリ防止/除去用にも 通販
ビニールテープ 液晶フレーム用 100 円ショップ、ドラッグストア、ホームセンター
両面テープ 液晶フレーム用 100 円ショップ、ドラッグストア、ホームセンター
養生テープ 各種固定用 ホームセンター
接点復活スプレー (Amazon) 基板 (接点) の清掃 ホームセンター
タミヤ F グリス (Amazon) スライドスイッチ摩耗防止用 通販、ホビーショップ
チャック付きビニール袋 分解時のネジやステーの保管 100 円ショップ
デジタルノギス (Amazon) スペーサーを使う場合のの調整に。安価な奴で充分です。 通販、ホームセンター
ミシン油 脱脂されてしまった金属部品の保護用。 ホームセンター

スペーサー

PC-1350 の液晶交換は難易度が高いので、精度を上げるためにスペーサーを用意してから作業する事をオススメします。

サイズ 数量 用途
35.0mm 2.5mm 0.6mm 1 交換液晶の位置決め用。
50.0mm 1.5mm 0.8mm 2 波打ち防止。下側に 2 本。
113.0mm 1.5mm 0.7mm 2 波打ち防止。上下 1 本ずつ。

安価な FDM 3D プリンタで作る際には誤差があるので現物合わせで。スペーサーの両端は膨らんでいたりして誤差が大きいのでデザインナイフやカッターナイフで整形を。

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液晶交換

液晶交換手順は『PC-1245 LCD 交換マニュアル』をなぞっています。

それなりの量のネジを外しますので、各工程ごとにチャック付きビニール袋にネジやパーツを保管しながら作業する事をオススメします。ダイソーだと No.1 (小物用ミニ) と No.4 (ハガキ)、No.6 (A5) のチャック付きビニール袋を購入しておくと便利です。

  1. キーボード部に養生テープを貼ります。分解時の飛散防止のためです。SIO コネクタにコネクタカバーが付いている場合には外してください。凹んでない方から取ると取りやすいです。
  2. ロックスイッチを解除して、裏蓋を外します。
  3. メモリカードが装着されていれば、メモリカードを取り外します。
  4. 電池押さえを外して、電池を取り出します。ロックスイッチの隣に隠しネジがあります。
  5. 背面カバー (底キャビネットユニット) の 7 本のネジを外し、カバーを開けます。手前から奥に立てかけるように起こしてください。90°くらいまでゆっくり起こします。
  6. 圧電サウンダのリード線をハンダごてを使用して取り外します。外さずに作業する事もできない事もありませんが、素直に外しましょう。外した後のパッドはハンダ吸い取り線でキレイにしておきます。
  7. 左下の円筒に収まっているカード蓋バネを外し、右側の 11P コネクタを押さえているシールド (制電板) のネジ 2 本を外します。
  8. ネジを 6 本外してメモリー基板ユニットを外します。
  9. 取り外したメモリー基板ユニットです。メイン基板ユニットとメモリー基板ユニットだけ繋がっていれば、外部 (11P コネクタ) から電源を供給する事によって表示テストが可能になります。
  10. ネジを 3 本外して下部のステー (アングル A) を外します。
  11. ネジを 1 本外して黒いプラスチックシャーシを外します。イメージ的には手前側を少し起こして、左下方向へ抜く感じです。メモリー基板ユニットと繋いでいたフィルムケーブル (フレキシブル基板) に注意してください。また、フィルムケーブルを外す際に小さな透明のプラスチック片 (ナット押さえシート: 画像上のポリイミドテープに貼りつけてあるもの) を外してしまったのなら、シャーシの裏面を確認してください。小さなナットが隠れています。ナットが見つからないのなら、メイン基板ユニットのどこかに落ちていると思います。
  12. 机に置いた状態でメイン基板ユニットを外します。手前から奥に起こすようにすると外れます。表に養生テープを貼っていない場合、浮かせて作業するとキーボードのパーツが飛散します。

    キーボードのメンブレンシート (ゴムスプリング) はメイン基板ユニット側に貼りついている事が多いので、ケース (上キャビネットユニット) 側に戻しておきます。
  13. LCD の偏光板を取り外します。樹脂のスパッジャーがあると剥がしやすいです。偏光板は切り欠きがあるのが左上です。この偏光板は外したらもう使用しないので、破損しても大丈夫です。偏光板を固定していた両面テープは IPA か無水エタノールでキレイに取り除いておきます。
  14. LCD ユニットの金属フレームの爪を起こします。全部で 8 箇所あります。基板にできるだけダメージを与えないよう、爪の下にポリイミドテープを滑り込ませてから作業するといいと思います。100均の精密マイナスドライバーの先を研いだものを用意しておくと便利です (樹脂製スパッジャーでは起こせない事があります)。起こす爪の横辺りの基板を金属フレームごとギュッと握るとわずかながら隙間ができる事があります。
  15. メイン基板ユニットと LCD ユニットを分離します。金属フレームの爪はペンチで挟んで真っすぐに矯正しておきます。
  16. LCD ユニット から導電ゴム (ゼブラコネクタ) を外します。ピンセットを使って端からゆっくりと剥がしてください。
  17. LCD と金属フレームは両面テープで接着されていますが、カッチカチになっていて外れないので、アセトン (ネイルリムーバー) に漬け込みます。食料品用のチャック付き袋だとアセトンは漏れませんが、念のためにタッパー等に入れておいた方がいいかもしれません。日向に置いておくと、2 時間くらいで外せるようになります。液晶面を完全に浸すのと、たまに液晶面を押してアセトンを浸透させるのが短時間で外すコツです。
  18. 金属フレーム内側の両面テープはキレイに除去してください。フレームの向きは穴がある (広い) 方が下です。
  19. 交換用 LCD を用意します。ポッチのある方が右側になります。金属フレームの側面の穴と反対方向に LCD のポッチが来ます。
  20. 金属フレームの外側にビニールテープを貼ります。偏光板を取ってしまった関係で、これをやっておかないとディスプレイ部にある表示マスクやアクリルフィルターが簡単にズレてしまうようになります。
  21. 金属フレームの内側にポリイミドテープを貼ります。
  22. 交換用 LCD の保護シートを外し、表側の端にポリイミドテープを貼ります。同じ場所に両面テープを貼ります。適当に貼ってから裏からデザインナイフやカッターナイフで切り取るのが簡単です。最終的にポリイミド⇔両面⇔ポリイミドの三層構造になります。こうすると位置合わせに失敗してもポリイミドテープの粘着力が弱いので貼り直しが可能になります。
  23. 交換用 LCD を金属フレームに載せます。フレームの右端と液晶の右端との間には 0.6mm の隙間が必要です。上下方向は上にピッタリくっつけてください。精度を上げるために 35mm スペーサーで位置調整しています。位置を固定したら (LCD を貼り付けたら) スペーサーは取り除きます。
  24. 精度を上げるために 50mm スペーサーをフレーム下側の左右からスライドさせて入れています。左右と中央の穴を塞がないように!この画像では上が金属フレームの下側です。
  25. 別売の導電ゴムは微妙に長いので LCD の幅でカットして使います。金属フレームの内側ギリギリでカットすると、押さえつけられた時に膨張して逃げ場がないので横方向に波打つことになります。オリジナルの導電ゴムを再利用する事もできます。導電ゴムを密着させるために IPA か無水エタノールで拭いてから載せます。LCD 側も拭いておきます。導電ゴムはできるだけ真っすぐ、内側に寄せておきます。精度を上げるために 103mm スペーサーを上下外側に配置しています。
  26. LCD 金属フレームを基板に取り付けます。フレームを基板に充分に押し付けた状態でツメを根元から曲げるのがコツです。最後まで曲げる必要はありません。ショートの可能性もないので、基板のエッジにポリイミドテープを貼る必要もありません。
  27. 分解の逆の手順で組み立てていきます。

  28. 交換完了です。背面にある ALL RESET を押して電源を ON にしてください。

トラブルシューティング

・横に線が入ったり、一部文字が表示されない

導電ゴムの接触不良です。横線は LCD の左右端の上下、縦線が表示されないのは左右端を除いた上下の接触不良です。基板や LCD のコンタクト部分、導電ゴムを IPA または無水エタノールで拭き、金属フレームの爪を根元から曲げてもっと導電ゴムを押し付けてください。

不具合のある状態で金属フレームを強く押してみてください。強く押して正しく点灯するのであれば締め付け圧 (密着) だけの問題です。なお、コントラストを MAX まで上げれば文字を入力しなくても不具合のある位置は大体わかります。

・文字がぼやけたり変な形になっている

導電ゴムが斜めにセットされています (波打っています)。金属フレームの爪を曲げる過程で導電ゴムが横に (金属フレームの上下方向に) スライドしてしまった可能性があります。基板や LCD のコンタクト部分、導電ゴムを IPA または無水エタノールで拭いて導電ゴムを密着させてみてください。

横にスライドして導電ゴムが波打つと、部分的に斜めにセットされた状態になり、不具合が生じます。

交換用 オリジナル
柔軟性 硬い 軟らかい
変形 しにくい しやすい
導電部 広い 狭い
歪み 弱い 強い
粘着力 なし あり
劣化 なし あり

何度試してもダメな場合は、オリジナルの導電ゴムを再利用してみてください。若干の粘着力があるため、最初にピンセットなどで軽く押さえると密着して横にズレにくくなります。間違ってアセトンに一緒に漬けてしまったものは使わない方がよいでしょう。

また、オリジナルの導電ゴムは導電部が狭いので若干歪みに強いです。逆に、歪みがなければ導電部が広い交換用の導電ゴムの方が優秀です。PC-1350 の場合、そもそもズレないようにスペーサーを使う事を推奨します。そしてスペーサーを使うのであれば交換用の導電ゴムの方がいいでしょう。

・変なドットの点灯の仕方をする。

基板と液晶の接続がズレている可能性があります。0.6mm スペーサーを用意してみてください。単純な形状なので、3D プリンタでなくとも作れると思います。変形に弱い紙で作るのはオススメしません。

・どれだけ調整しても (押さえても緩めても) 縦にも横にも線が入る。

LCD ユニットの 金属フレームと LCD の間の空間が足りていない可能性があります。オリジナルは結構厚めの両面テープで固定されていました...つまりはあの厚みが必要です。薄い両面テープを使ったり、所々に貼ったり、そもそも両面テープを貼っていなかったりすると全体的にあるいは部分的に厚みが足りません。導電ゴムを載せた状態で金属フレームを横から見て観察してみてください。

厚みが足りない場合、爪をいくら曲げても (もちろん緩めても) 状況が好転する事はありません。当記事ではポリイミドテープでこの厚みを調整しています。また、爪の曲げ方について「軽く曲げた方がいい」「根元から曲げた方がいい」と人によって言っている事が異なるのはこれが原因だと思われます。

・PC-1245 や PC-125x ではうまくいったのに…?

LCD コンタクト部のピッチが違います。脅すわけではないですが、PC-1350 用 LCD 交換の難易度は高いです。画像の上が PC-1251 の液晶で、下が PC-1350 の液晶です。

PC-1245PC-125x で許容されていた、わずかなズレや歪みが PC-1350 では許容されません。



圧電サウンダー (スピーカー) が千切れちゃったのだけれど?

リード線が外れただけならハンダ付けすれば OK です。

電極 リード線 基板 圧電サウンダ
プラス 左側 内側
マイナス 右側 外側

外して無くしちゃった人は、直径 22mm までの圧電サウンダ (スピーカー) を探しましょう。Amazon とかでも入手可能ですが、秋月電子等で買った方が安いです (送料を考えなければ)。直径 20mm くらいの圧電サウンダだと入手性がいいと思います。

リード線が付いていない圧電サウンダはハンダ付けの難易度が高いので、短くてもリード線の付いているものを買った方がいいと思います (付け替えは難しくない)。



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