SHARP PC-1245 の修理

SHARP PC-1245 の修理に関する記事です。




液晶交換

PC-1245 の LCD が黒くなってしまった際の交換用 LCD が頒布されています。

LCD 交換 (+α) の際にあると便利なものは次の通りです。

用途 入手先
精密プラスドライバー #1 分解用 100 円ショップ
精密マイナスドライバー 液晶フレームのツメを起こすのに。可能なら砥石で先端を研いでください。
元々刃物だったものをツメを起こす用途で使うと欠けて危険です。
100 円ショップ
スパッジャー (Amazon) 液晶フレームのツメを起こすのに。樹脂製のものは基板に傷を付けにくい。 通販
ラジオペンチ 液晶フレームのツメを起こすのに 100 円ショップ
歯ブラシ 液晶フレームのツメを折り曲げるのに (お尻で押します)
無水エタノールで清掃する際にも
100 円ショップ、ドラッグストア
アセトン (ネイルリムーバー) 液晶フレームから液晶をはがすのに ホームセンター、100 円ショップ
ジップロック (的な袋) 液晶フレームから液晶をはがす時の漬け込み用 100 円ショップ
イソプロピルアルコール or 無水エタノール 清掃用 ドラッグストア、ホームセンター
綿棒 清掃用 100 円ショップ、ドラッグストア
ポリイミドテープ (Amazon) 液晶フレームのツメを起こす時の基板保護、短絡防止、ホコリ防止/除去用にも 通販
ビニールテープ 液晶フレーム用 100 円ショップ、ドラッグストア、ホームセンター
両面テープ 液晶フレーム用 100 円ショップ、ドラッグストア、ホームセンター
養生テープ 各種固定用 ホームセンター
接点復活スプレー (Amazon) 基板 (接点) の清掃 ホームセンター
タミヤ F グリス (Amazon) スライドスイッチ摩耗防止用 通販、ホビーショップ
チャック付きビニール袋 分解時のネジやステーの保管 100 円ショップ
デジタルノギス (Amazon) スペーサーを使う場合のの調整に。安価な奴で充分です。 通販、ホームセンター
ミシン油 脱脂されてしまった金属部品の保護用。 ホームセンター

スペーサー

精度を上げるためにスペーサーを用意してから作業する事をオススメします。画像は PC-1350 のものです、PC-126x では 113.0mm (2 本) だけを使います。

サイズ 数量 用途
113.0mm 1.5mm 0.7mm 2 波打ち防止。上下 1 本ずつ。

安価な FDM 3D プリンタで作る際には誤差があるので現物合わせで。スペーサーの両端は膨らんでいたりして誤差が大きいのでデザインナイフやカッターナイフで整形を。

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液晶交換

液晶交換手順は『PC-1245 LCD 交換マニュアル』をなぞっています。先に公式マニュアルを熟読する事をオススメします。

  1. 裏蓋のネジを外します。
  2. 電池カバーを外して、電池を取り出します。
  3. 圧電サウンダのリード線をハンダごてを使用して取り外します。外さずに作業する事もできますが、外して作業した方が圧倒的に楽です。この状態で圧電サウンダを外す場合には周囲をポリイミドテープで保護した方が無難です。
  4. ネジを 4 本外して
  5. 黒いプラスチックフレームを外します。手前から奥に起こすようにすると外れます。圧電サウンダはここで外してもいいと思います。
  6. 机に置いた状態で基板を外します。手前から奥に起こすようにすると外れます。浮かせて作業するとキーボードのパーツが飛散します。作業中は表から養生テープを貼っておくといいかもしれません。

    キーボードのメンブレンシートは基板に貼りついている事が多いので、ケース側に戻しておきます。
  7. LCD の偏光板を取り外します。偏光板は切り欠きがあるのが左上です。この偏光板は外したらもう使用しないので、破損しても大丈夫です。偏光板を固定していた両面テープは IPA か無水エタノールでキレイに取り除いておきます。
  8. LCD の金属フレームの爪を起こします。全部で 8 箇所あります。100均の精密マイナスドライバーの先を研いだものを用意しておくと便利です (樹脂製スパッジャーでは起こせない事があります)。起こす爪の横辺りの基板を金属フレームごとギュッと握るとわずかながら隙間ができる事があります。
  9. 基板と LCD の金属フレームを分離します。金属フレームの爪はペンチで挟んで真っすぐに矯正しておきます。
  10. LCD から導電ゴム (ゼブラコネクタ) を外します。ピンセットを使って端からゆっくりと剥がしてください。
  11. LCD と金属フレームは両面テープで接着されていますが、カッチカチになっていて外れないので、アセトン (ネイルリムーバー) に漬け込みます。食料品用のチャック付き袋だとアセトンは漏れませんが、念のためにタッパー等に入れておいた方がいいかもしれません。日向に置いておくと、2 時間くらいで外せるようになります。液晶面を完全に浸すのと、たまに液晶面を押してアセトンを浸透させるのが短時間で外すコツです。
  12. 金属フレーム内側の両面テープは粘着力が残っていますのでそのままでも大丈夫な事が多いですが、キレイに除去して新しい両面テープを貼った方が無難です。アセトンのせいで厚みが均一になっていない事があるからです。両面テープを貼り換える際は、厚めのものを使って下さい。
  13. 交換用 LCD を用意します。ポッチのある方が右側になります。金属フレームの穴と反対方向に LCD のポッチが来ます。両面テープはポリイミド⇔両面⇔ポリイミドの三層構造にすると、位置合わせに失敗してもポリイミドテープの粘着力が弱いので貼り直しが可能になります。詳しくは PC-1350 の手順を確認してみてください。
  14. 交換用 LCD の保護シートを外し、金属フレームに載せます。付属の導電ゴムは微妙に長いのでカットして使います。元々の導電ゴムを再利用する事もできます。導電ゴムを密着させるために IPA か無水エタノールで拭いてから載せます。LCD 側も拭いておきます。導電ゴムはできるだけ真っすぐ、内側に寄せておきます。

    私は使いませんでしたが、導電ゴムがズレないように 3D プリンタで作ったスペーサーを噛ますのもいいかと思います。爪を曲げた時に必要以上の圧力が基板に掛からないようにする効果も望めます。PC-1245 はガラス基板ではないので、爪を曲げた所だけがたわむ事があります。他機種の液晶交換を参考にしてみてください。
  15. 基板にポリイミドテープを貼ります。金属フレームの爪と基板を直接触れさせないようにします。
  16. LCD 金属フレームを基板に取り付けます。フレームを基板に充分に押し付けた状態でツメを根元から曲げるのがコツです。
  17. 分解の逆の手順で組み立てていきます。LCD 金属フレームは両面テープを剥がす時に脱脂しているので、サビがあるようでしたらミシン油を薄く塗布しておくといいと思います。
  18. 交換完了です。背面にある ALL RESET を押して電源を ON にしてください。

トラブルシューティング

・スイッチが OFF なのに BUSY インジケーターが点灯したままになる

背面にある ALL RESET を押しても BUSY インジケーターが点灯したままの場合、金属フレームと基板 (のパターン) が接触しています。ポリイミドテープと、金属フレームの爪を確認しましょう。金属フレームの上側の爪がちゃんと曲げられていないとこの現象が発生しやすいです。

・横に線が入ったり、一部文字が表示されない

導電ゴムの接触不良です。横線は LCD の左右端 7mm くらいの上下、文字が表示されないのは左右端を除いた上下の接触不良です。基板や LCD のコンタクト部分、導電ゴムを IPA または無水エタノールで拭き、金属フレームの爪を根元から曲げてもっと導電ゴムを押し付けてください。ポリイミドテープが基板の LCD コンタクト部分に挟まっていないかも確認してください。

・文字がぼやけたり変な形になっている

導電ゴムが斜めにセットされています (波打っています)。金属フレームの爪を曲げる過程で導電ゴムが横に (金属フレームの上下方向に) スライドしてしまった可能性があります。基板や LCD のコンタクト部分、導電ゴムを IPA または無水エタノールで拭いて導電ゴムを密着させてみてください。

横にスライドして導電ゴムが波打つと、部分的に斜めにセットされた状態になり、不具合が生じます。

交換用 オリジナル
柔軟性 硬い 軟らかい
変形 しにくい しやすい
導電部 広い 狭い
歪み 弱い 強い
粘着力 なし あり
劣化 なし あり

何度試してもダメな場合は、オリジナルの導電ゴムを再利用してみてください。間違ってアセトンに一緒に漬けてしまったものは使わない方がよいでしょう。

オリジナルの導電ゴムは導電部が狭いので若干歪みに強いです。逆に、歪みがなければ導電部が広い交換用の導電ゴムの方が優秀です。可能であれば、ズレないようにするためのスペーサーを使ってみてください。

・どれだけ調整しても (押さえても緩めても) 縦にも横にも線が入る。

LCD ユニットの金属フレームと LCD の間の空間が足りていない可能性があります。オリジナルは結構厚めの両面テープで固定されていました...つまりはあの厚みが必要です。薄い両面テープを使ったり、所々に貼ったり、そもそも両面テープを貼っていなかったりすると全体的にあるいは部分的に厚みが足りません。導電ゴムを載せた状態で金属フレームを横から見て観察してみてください。

厚みが足りない場合、爪をいくら曲げても (もちろん緩めても) 状況が好転する事はありません。当記事ではポリイミドテープでこの厚みを調整しています。また、爪の曲げ方について「軽く曲げた方がいい」「根元から曲げた方がいい」と人によって言っている事が異なるのはこれが原因だと思われます。



圧電サウンダー (スピーカー) が千切れちゃったのだけれど?

リード線が外れただけならハンダ付けすれば OK です。

黒いプラスチックフレームはネジ留めされていない状態で作業しましょう。ポリイミドテープで周囲を保護しておくとフレームを溶かす事故を防げます。

電極 リード線 基板 圧電サウンダ
プラス 左側 内側
マイナス 右側 外側

外して無くしちゃった人は、直径 22mm までの圧電サウンダ (スピーカー) を探しましょう。Amazon とかでも入手可能ですが、秋月電子等で買った方が安いです (送料を考えなければ)。直径 20mm くらいの圧電サウンダだと入手性がいいと思います。

リード線が付いていない圧電サウンダはハンダ付けの難易度が高いので、短くてもリード線の付いているものを買った方がいいと思います (付け替えは難しくない)。



裏蓋のネジを無くしてしまったのだけれど?

M2 皿ネジ 8mm が適合しますが、ほんの少しだけ長いので、全体の長さを 7.50mm 程度まで削ったほうがいいと思います。このネジは普通のホームセンターでも見かけます (当方が購入したものは実測で 7.85mm でした)。

裏蓋を外した所に見えているネジは、PC-1245 と PC-125x で異なります。PC-1245 のプラスマイナスネジ 3 本は M2 バインド (or トラス) ネジ 8mm を 7.20mm 程度まで削ったものが使えると思います。普通のホームセンターでは入手が難しいので、ミニ四駆のパーツを探すといいと思います。ミニ四駆では改造用として M2 ネジがよく使われています。

場所 ネジ 実測長 代替推奨 本数
裏蓋 M2 皿ネジ 7.72mm 7.50mm 2
プラスチックフレーム 1
プラスチックフレーム M2 バインドネジ
(プラスマイナス)
7.50mm 7.20mm 3

長い M2 ネジをキレイに切断するには ENGINEER PA-01 を使うとよさそうです。

ネジが長すぎるとキツめに締めた時に表のアルミプレートが凸ってきます。トップの画像は純正のネジしか使っていないのですがP / N / ENTERキーの右上がわずかに凸ってます。純正のネジしか使っていなくても、皿ネジとバインド (or トラス) ネジを間違ってしまうと凸ります。



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